Trinity搭載スラローム用ブーツ「HC Evo Pro」の実走レビュー!

史上初となるTrinityマウント搭載のスラローム用ブーツHC Evo Pro
スペックの詳細はスラローム用のTrinityブーツ「HC Evo Pro」を紹介!を読んでいただき、ここでは実際にいろいろ試しながら滑ってみた使用感などを書いていきたい。

過去25年間の中で、30足以上のブーツでスラロームを楽しんできたけれど、このHC Evo Proはその中でも個人的ベスト3に入るのは間違いない。自分史上最高のスラローム用ブーツと言ってもいいくらい。
そして、「高性能なスラローム用ブーツ=操作性の良い街乗り用ブーツ」という法則にしっかり当てはまるので、街中を滑っても気持ちよくキビキビ動いてくれるブーツだ。

ちなみに、2019モデルも大幅な変更がないようなので、現行の2018モデルだけでなく来期の2019モデルの購入の際も、この記事を参考にしてもらえるはずだ。

商品

項目 概要 備考
商品名 HC Evo Pro Trinity
メーカー Powerslide
型番 908253
参考価格 64,000円(税別)
総重量 1395g EU40片足

構成

パーツ ギア 重量 規格
ブーツ HC Evo Pro (EU40) 749g / 片足 Trinity
フレーム Katana 3×90/225mm 195g / 片足 Trinity
ウィール Spinner 90mm/88A 107g / 個
ベアリング Twincam ILQ 9 Classic 11g / 個

履き心地

過不足ないウレタンパッドが適所に配置されていて、ふかふかした足入れ感はないけれど、痛くなるような履き心地ではない。
できるだけ薄いパッドで足にフィットさせて、ルーズさをできるだけ排除しようとしている。そして、アッパーにも剛性のあるカーボン素材を使っていて、高いサポート力を実現させている。この薄いパッドとカーボンを使用することによって、フィット感とサポート力としなやかさがバランス良く仕上がっている。さらに足への負担を最小限に抑えつつ、足の動きへの反応が良い仕上がりにもなっている。

細部を見ていくと、ブーツ内のかかと上の形状がアキレス腱を挟むように細く絞られている。初めて履くと「おお!」っと驚いてしまうくらい履き心地だが、これによってかかと浮きを劇的に抑えてられていて、フィット感向上に大きく貢献している。
ワンピース構造のタンもなかなか良い。もっとも、Powerslide社は2010年頃からこのタイプのタンをフォットネスブーツやUSDのアグレッシブブーツに採用しているので、使用感や耐久性の実績は十分。それなりに反発力がありつつも厚くないので、ブーツ内で足が浮くことを抑えられていて、フィット感も問題なし。しかも構成パーツが少ないので軽い。
足首の動きを妨げる要素はなく、カフが少し低め(TauやKazeより1cmくらい低い)に取り付けられていることもあって、足首の可動域はしっかり確保されている。

とは言え、履き心地やアッパーの作りが100点満点という訳ではない。
ブーツのくるぶし部分のパッドが、自分のくるぶしより少し上に位置していて、自分の足には合っていないかった。
つま先部分はスラロームをしやすくするために低く、硬めに作られているので、かなり窮屈に感じた。
加えて、ダイレクトな操作感を追求しているのか、インソールが入っていないので、足裏のフィット感があまりない。
初めて足を通した時はこの3か所に違和感を感じたので、まず足裏全体の収まりを良くするためにSUPERfeetのインソール(Yellow)を入れ、インソールのかかと下にソルボヒールを入れて少しかかとの高さを上げた。こうして足裏のフィット感とくるぶしの高さをパッドに合わせて違和感を改善。
低かったつま先部分はインソールの厚さ分だけ高さがなくなり、さらに窮屈なったが、しばらく履いているとブーツが馴染んできて、つま先の圧迫感もなくなった。
こうして熱成形をすることなく、自分の足に合った履き心地、フィット感が実現した。

カーボン製ということもあり、ブーツ自体もかなり軽くできていて、フレームやウィールを含まないEU40サイズのブーツのみの片足分の重量は749g。これは他社製品を含めても、スラローム用ブーツの中では最軽量の部類に入る。
ちなみに、スラローム用ブーツとして最も有名なSeba Highの重量より、約25%も軽い。
さらに3輪なので一般的な4輪よりウィール1つ分軽くなっている。
ただし、Katanaフレームは剛性に重きを置いた作りのため、それほど軽くはない。
しかし軽いカーボンブーツと1輪少ないことにより、足裏下も軽いブーツに仕上がっている。実際に滑ってみるとすぐにその軽さを実感でき、足への負担も軽減されるのがわかるはず。

操作性

ブーツは、長年のスピードブーツ製作に裏打ちされた高品質なカーボンソールに、金属プレートが埋め込まれたTrinityマウントを搭載している。
付属の3×90のKatanaフレームは剛性も精度も高く、長さが短めなので回転性が良い作りになっている。
上記のTrinityマウントやフレームのおかげで、力の伝達が良く、足の動きに対して機敏に反応してくれる上に、抜群の安定感がある。
90mmのウィールが入っているが、Trinityマウントのおかげで、通常のフレーム(Vフレームなど)に80mmウィールを付けいているのと同じ高さとなっている。そのため、80mmウィールと同じ感覚でしっかり蹴ってダッシュができる上に、ウィール径が大きいので加速が速くてスピード維持も楽になっている。

90mmの3輪ではある、スラローム用ブーツと謳っているだけあって、スラロームがやりやすい。
Sebaのブーツにはかかとに高さを出すためのHDSというパーツを付けるが、このHC Evo Proでは最初からかかと部分を5mm上げている。これにより、膝がまっすぐ前に出やすくなって、スラローム技がやりやすい仕様になっている。
フレームが4輪よりも短めになっているので、ウィール径が90mmと少し大きくても小回りさせやすい。ちなみに海外の女性ライダーは3×90フレームに84mmのウィールを入れて使っている。90mmではウィールが大きくて小回りさせにくいと思う場合は、84mmに交換すると良いかもしれない。

スラロームをする時など、旋回性を上げたい時は、フレームシャフトを反転させるだけで、簡単にロッカリングにできる。
緩めのロッカリングにさせたい時は真ん中と後ろのウィールを下に出すようにし、きつめのロッカリングをさせたい場合は真ん中のウィールだけ下に出すようにする。
緩めのロッカリングでも十分に旋回性が上がってスラロームがしやすくなるので、まずこの緩めのロッカリングで試してみて、しっくりこない場合はきつめのロッカリングに変更すると良いと思う。
ただし、接地する2輪の距離が、4輪のロッカリングよりも長くなるため、スラローム時に前と後ろのウィールへの荷重がしっかりできていないと、旋回性が悪いと感じる恐れがある。
個人的には、トリックスラロームでは滑りのクセがあったので少し慣れが必要だったけれど、フリースタイルスラローム(FSS)ではどの技も最初から何の違和感もなくできた。

『履き心地』の項でも書いたけれど、カフ自体の高さが低く取り付け位置も低めなので、足首の可動域が広くて、いろいろなスラローム技がやりやすい。
カーボン配合樹脂で作られているカフの剛性が高めのため、足首回りのサポート力はしっかりしている。

スピード

タイトなフィット感のブーツ、硬いカーボンソール、高品質なフレーム、少し硬めのウィール、これらの要素が揃っているので力の伝達にロスが少なく、とても良くスピードが乗る。
Trinityマウントによる低重心設計なので、ダッシュや加速がしやすい。
一般的なスラローム用ブーツより大きい、90mmのウィールが入っているので、スピード維持も少し楽になる。

スピードを出して滑るということに関して僕の感覚では、Trinityの3×90フレームは、通常の4×76フレームで滑るよりも20〜30%くらい力を使わなくて済む感じがする。90mmのウィールのスピード感に慣れてしまうと、もう76mmで街中を滑りたくなくなってしまう。

カスタマイズ

オーブンで熱成形してブーツを自分の足に合わせることができるため、ブーツが当たって足が痛くなることを限りなく避けることができる。

バックルがネジ留めなので、簡単に好きなものに交換可能となっている。
白いラチェットを別売りの黒いラチェットに替えることができるだけでなく、通常のオスとメスのあるバックルにも替えることができる。
バックルを固定する2つのネジ穴は共通になっていることが多いので、Powerslideのものにはもちろん、USDや他メーカーのバックルにも付け替えることができる。
ただし、ギザギザが付いたベルトの長さ、特にラチェット式のベルトには短めのものもあるので、交換時は要注意。

フレームの後ろ側2輪は、シャフトを上下反転させると2mm上げ下げできるので、ウィールを交換しなくてもフルフラットとロッカードの変更が可能。
そのため、街乗りする時はフルフラットで、スラロームする時はロッカリングさせて滑ることが、工具1本で簡単にできる。

フレームは前後左右に1cmくらい動かせるので、好みのポジションに位置調整させることができる。
もっと左右に動かしたい場合は、別売りの「Trinity Stride Control」という少し傾斜のついた樹脂の板を噛ませることで対応させることが可能となっている。

フレーム交換は、3点留めのTrinityマウント搭載のTrinityフレームのみ可能。
とは言え、Powerslideから30種類くらいTrinityフレームが発売されているので、欲しいフレームはだいたい見つかるはず。

左:PowerslideのClassic Buckle 中央:USDのシルバーバックル 右:PowerslideのFSK Replace Time Buckle
写真1 左:PowerslideのClassic Buckle 中央:USDのシルバーバックル 右:PowerslideのFSK Replace Time Buckle

バックル2つとも購入時の白いラチェットのまま
写真2 バックル2つとも購入時の白いラチェットのまま

ラチェットを2つとも黒い「FSK Replace Time Buckle」に交換
写真3 ラチェットを2つとも黒い「FSK Replace Time Buckle」に交換

カフのバックルを「Classic Buckle」に、甲のバックルを「FSK Replace Time Buckle」に交換
写真3 カフのバックルを「Classic Buckle」に、甲のバックルを「FSK Replace Time Buckle」に交換

カフのバックルをUSDのバックルに、甲のバックルを「FSK Replace Time Buckle」に交換
写真4 カフのバックルをUSDのバックルに、甲のバックルを「FSK Replace Time Buckle」に交換

コスパ

税込みで69,120円。
価格だけ見れば安いものではないけれど、Powerslideでは最高ランクのスラローム用ブーツで、最新技術を投入した品質や性能を考えると、個人的には決して高いとは思えない。

例えば、SebaskatesのカーボンブーツであるTrix 80は73,440円、KSJ Shadowは91,800円。
HC Evo Proはこれらより安く、安定感と操作性に優れているTrinityマウント搭載している上に、タイトめのフィット感が良い上に熱成形も可能。
新しいスラローム用のブーツを探している人やSebaのブーツに飽きてきた人には、ぜひとも試して欲しい良コスパの1足である。

遊び方

スラローム

基本的には、4×76や4×80フレームをつけたブーツと同じような感覚でスラロームができる。

ウィールが90mmと大きくスピードを出しやすいため、スピードスラロームでは有利。
ウィールのサイズは大きくても、Trinityマウントのおかげで車高が低いから、ダッシュやスラロームは4×76や4×80フレームと同じ感覚でできる上に、4×76や4×80フレームよりスピードは速い。

スピードが落ちにくいため、2輪系や1輪系の技は距離が伸びるので、やりやすい。
また、スピードが落ちにくいということは長く低速で滑走できるため、落ち着いて新しい技にチャレンジしやすくなる。

ウィールとウィールの間の距離が4輪フレームより長い。
そのため、ロッカリング時にしっかりつま先荷重やかかと荷重で滑ることがができていれば問題ないが、これらができないと、4輪フレームより多少旋回性が落ちたような操作感になる。
反対に、ウィール間が長いということは、ロッカリングをした時に4輪フレームのロッカリングより安定感があるという利点と捉えることもできる。

トリックスラロームでは3×90フレームのロッカリングに慣れるまでの少しの間は旋回性が悪く感じたけれど、慣れてしまうと安定感が良く、速度維持が楽で、4×76フレームより快適にスラロームをできるようになった。
一方、フリースタイルスラローム(FSS)ではつま先荷重やかかと荷重でする技が多いので、最初から何の問題もなかった。

街乗り

90mmのウィールは76mmや80mmより少し楽にスピードが出せて、多少ではあるが荒れた路面にも強い。
そしてフレーム長が短いので、フルフラットでも小回りが利き、キビキビと動くことができる。

アッパーにサポート力があるので、あまりカフに頼らなくても、アウトエッジから入ってインエッジで蹴るストライドがしっかりできるので、ただ普通に滑る場合でも無駄な力を掛けずに済む。
もし他のフレームを揃えられるのなら、3×110に交換すれば操作性抜群の街流し用ブーツになり、3×125に交換すれば扱いやすいロングライド用ブーツになる。

まとめ

今のPowerslideが最高のスラローム専用ブーツとして仕上げてきただけあって、このHC Evo Proのタイトめのフィット感や安定感のある操作性は、スラローマーにとって最高の一足。それだけでなく、機敏な足の動き追従してくれる操作感のおかげで、ストレスを感じずに街中を駆け抜けることができるので、街乗り用ブーツとしても良い相棒になってくれる。
また、他社製品を含め、スラローム用ブーツの中で熱成形が可能なブーツはほとんどないので、これもとても大きな優位点。
3×90のフレームとウィールも、旋回性をキープしつつスピードアップも実現していて、この絶妙なスペックも素晴らしいと思う。

今までのHC Evoシリーズを使っている人だけでなく、Seba HighやTrixなど、Sebaskatesのスラローム用ブーツを履いている人も、このHC Evo Proにあまり違和感を感じずに乗り換えが可能だろう。僕自身も2年前までTrixを最高のスラローム&街乗り用ブーツだと思って使っていたけれど、フィット感や操作感など全ての点においてHC Evo Proの方が上に感じる。
どうしても3輪フレームに馴染めない場合は、4×80フレームに換装すれば、Vフレームで4×72フレームを付けていると同じくらいまで車高が下がり、安定感抜群のブーツになるのも嬉しい。

スラロームをメインに滑っている人たちにとって1ランク、2ランク上の滑りやすさを提供してくれる新世代のブーツ、それがこのHC Evo Proだと思っている。
初心者から上級者まで技術レベルを問わず、誰にでも自信を持っておすすめできるブーツだ。

参考ページ

サイト ページ 説明
Powerslide Powerslide HC Evo Pro Trinity 公式ページ