抜群の操作性を誇る3×110ハードブーツ「Next Pro Black 110」のスペックとレビュー:高田健一

PowwrslideのNextシリーズには通常の3x110モデル「Next Blackout 110」や「Next Core Black 110」などがありますが、この「Next Pro Black 110」は、それらの上位モデルとなります。
インナーブーツ、フレーム、ウィール、ベアリングがそれぞれグレードの高いものが装着されているので、買ったその日から1ランクも2ランクも上の滑りを楽しめる仕様となっています。
その「Next Pro Black 110」の詳細なスペックや実際の使用感を、Skrapの高田がお伝えします。

スペック

「Next Pro Black 110」の各パーツのスペックや特徴です。

商品

項目 概要 備考
商品名 Next Pro Black 110 -
メーカー Powerslide -
型番 908333 -
参考価格 39,000円 税別
総重量 1,712g EU40-41片足

構成

パーツ ギア 重量 規格
シェル Next 639g / EU40-41片足 Trinity
インナーブーツ MYFIT Liner SPC Dual Fit 276g / EU40-41片足
フレーム Trinity Ego SL 243mm 3x110 177g / 片足 Trinity
ウィール Undercover Team 110mm/86A 166g / 個
ベアリング Wicked SKF 11g / 個 608Z

Next Pro Black 110

写真1Next Pro Black 110

ブーツ

シェル

  • Next
  • 外側のプラスティックのシェルと、厚く硬めのパッドの熱成形可能なインナーブーツで構成されたハードブーツ。
  • ブーツサイズがEU40-41サイズ(26.0cm相当)の各パーツの重量は、シェルは639g、インナーブーツは276g、インソールは19g、シューレースが14g。
  • フレームマウントの規格はPowerslide独自の「Trinityマウント」。
  • フレームの取り付け位置を左右に1cm弱くらい調整可能。

インナーブーツ

  • MYFIT Liner SPC Dual Fit
  • 「super-foam」という素材の硬めのパッドで作られていて、力の伝達と衝撃吸収と耐久性に優れている。
  • シューホールがあるので、インナーブーツでもフィット感の調整が可能。
  • 熱成形に対応していて、熱成形するとフィット感とレスポンスに優れたインナーブーツとなる。
  • スラロームやフリースケートなどのアーバンスケート、アグレッシブに最適。
  • 同じ品名で単品販売されているものと、内張のファブリックが足の出し入れがしやすい滑りの良いものになっていたり、パッドも単品販売のものより若干柔らかいなどの違いがある。

写真2 インナーブーツ「MYFIT Liner SPC Dual Fit」 左:インナーブーツを横から 右:インナーブーツを上から

写真2「MYFIT Liner SPC Dual Fit」 左:インナーブーツを横から 右:インナーブーツを上から

フレーム

  • Trinity Ego SL 243mm 3x110
  • 押出成形の6061アルミ製。
  • 最大ウィール径が110mmの3輪フルフラット仕様。
  • フレーム長(1輪目と3輪目の間隔)は243mm。
  • フレームマウントの規格はPowerslide独自の「Trinityマウント」。
  • フレームの取り付け位置を前後に約1cm調整可能。
  • 3x110のアルミ製Trinityフレームの中で最軽量。全てのアルミ製Trinityフレームの中でも2番目の軽さ。
  • ブリッジなし。

フレーム「Trinity Ego SL 243mm 3x110」 上段:フレームを横から 中段:フレームを上から 下段:フレームを下から

写真3「Trinity Ego SL 243mm 3x110」 上段:フレームを横から 中段:フレームを上から 下段:フレームを下から

ウィール

  • Undercover Team 110mm/86A
  • Powerslideグループ傘下のUndercoverの高品質ウィール。
  • スピード、グリップ、耐久性に優れたウレタンを使用。
  • プロファイル(断面の形状)は、スピードが出やすい「バレット」。
  • 通常滑走はもちろん、ジャンプやスライドにも対応できるので、フリースケートにも向いている。
  • スピードスケート用ウィールの「Matter」と同じ米国内の工場にて製造。

ウィール「Undercover Team 110mm/86A」

写真4「Undercover Team 110mm/86A」

ベアリング

  • Wicked SKF
  • Wickedから販売されている、スウェーデンの老舗ベアリングメーカーのSKF製。
  • 低粘度の潤滑油が注油されているので、滑り始めから高速回転する。
  • 片面シールドでリテーナーは取り外し可能な樹脂製なので、メンテナンスが容易。
  • ABECやILQのようなランク表記はないが、各規格の最高ランクのベアリングより高価で、Powerslideのスピードブーツの中でも10万円を超えるモデルに搭載されている。

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写真5「Wicked SKF」 左:表面 右:裏面

その他

  • ヒールブレーキは付属していないが、別売りの「FSK Urban Brake」のLサイズが取り付け可能。

レビュー

履き心地

インナーブーツのパッドは厚めですが、ふかふかした柔らかさはなく、硬い感触です。熱成形せずに履くと、痛さを感じるほどかなり硬い履き心地です。
しかし、オーブンやドライヤーできちんと熱成形すると、ぴったり自分の足にフィットして、痛さや違和感はなくなります。
アキレス腱を挟むようにパッドが配置されているので、かかと浮きがありません。

Nextのカフやシェルは柔らかめですが、硬めのインナーブーツとの相性が抜群で、足の可動域を確保してくれつつ、しっかり足をサポートしてくれます。

かかと下にアグレッシブブーツのAeonと同じショックアブソーバーが配置されているため、ジャンプの着地時の衝撃を弱めてくれます。

操作性

レスポンスの悪さがハードブーツの弱点の一つですが、「Next Pro Black 110」のSPC Linerに使用されている硬めのパッドのおかげで、ハードブーツとは思えないほどレスポンスが良いです。
目隠しをされて滑ったら、高価なカーボンブーツと勘違いするかもしれないくらい、足の動きに対して機敏に反応してくれます。

Trinityマウントが採用されているので、低重心と3点固定による安定感とエッジの操作に優れています。
特にこのブーツはウィールのサイズが110mmと大きいので、一般的なブーツより足下の重心が約1cm低くなるのは、かなりメリットがあります。
また、ブーツ側のマウント部分は金属パーツが使われていませんが、一般的な165mmマウントと異なり、金属パーツの不使用による操作性への影響は特に感じられません。

軽量化を追求したフレームは、無駄に厚くなく、ブリッジもありません。
しかし十分な剛性があり、負荷を掛けてもフレームがねじれて反応が悪くなるようなことがないので、ダッシュやエッジ操作も問題ありません。
また、フレーム長が一般的な4x80フレームと同じ243mmと短めとなっていて、取り回しやすいです。

Undercoverのウィールは、スピードが乗りやすくてしっかりグリップしてくれるので、路面の良し悪しを気にせず、加速もターンも思いのままに滑ることができます。

これほどキビキビ動いてくれて、気持ち良く滑れる3x110のハードブーツは他に見当たらないのではないかと思うくらい、かなり操作性が良いブーツです。

スピード

スピードに関わる主なパーツであるフレーム、ウィール、ベアリングのどれもが高品質で、シェルにねじれの負荷が掛かってもよれることがないので、ストレスなく加速やスピードの維持ができます。

Trinity Ego SLフレームは精度が良く、剛性もあるため、ウィールの回転を一切妨げません。

Undercoverのウィールは硬さも程良く、転がり抵抗もなく、スピードの乗りが良いです。

SKFのベアリングは特筆ものです。
使い始めは回転が少し重く感じるかもしれませんが、オイルが馴染んでくると、抵抗なくスムーズに回転します。
速いと言ってもBones Swissなどのように機械的、金属的なフィーリングはありません。ベアリングの存在を忘れさせてしまうような、静かでなめらかな高速回転をしてくれることによって、思う存分かっ飛ばすことができます。

カスタマイズ

バックル類やバンパーやカフなどの全てのパーツが、六角レンチやプラスドライバーで交換可能です。
また、Powerslideが販売している様々なTrinityフレームの全てと付け替えることができます。
交換パーツやフレームはDeeportから取り寄せられるので、自分で簡単にカスタマイズや修理ができます。

Xスロットが採用されているので、フレームの位置を前後左右に約1cmくらい調整ができ、自分好みのフレーム位置をセッティングできます。
内股やがに股の人も、フレーム位置を左右に動かすことによって、滑りやすくなります。

カフの取り付けパーツを反転させることによって、カフの高さを変更したり、カント調整が可能となっています。

シェルのかかと上の二股に分かれている部分をカットして、フレックスを調整できます。
カットする部分には、目安となる線が入っています。

履き心地」の項でも書きましたが、インナーブーツのSPC Linerは熱成形に対応しています。
自宅でドライヤーによる熱成形が可能です。(参考:https://www.facebook.com/natsu.yasui/posts/3971034062969062
自分で焼くのが難しい場合、Deeportなのど販売店で専用オーブンによる熱成形をしてもらえます。通販で購入した場合は別途料金が掛かりますが、専用オーブンがあるインラインスケート取扱店(PAPASU、S-FOURなど)に持ち込んで熱成形をしてもらうこともできます。

コスパ

Deeportでの販売価格は39,000円(税別)と安いブーツありません。しかし、インナーブーツ、フレーム、ウィール、ベアリングのパーツがグレードアップしているにもかかわらず、通常モデルの「Next Blackout 110」の価格は35,000円(税別)と、4,000円しか差がありません。
通常モデルから各パーツを「Next Pro Black 110」のものにグレードアップさせる場合、定価ベースで考えると最低でも20,000円は上乗せしないと買えないと思われます。4,000円では、ウィールをSpinnerからUndercoverへグレードアップすることすら微妙です。
このように考えると、通常モデルの購入後に何かしらのパーツをグレードアップすることを考えているのでしたら、最初からこの「Next Pro Black 110」を買っておいた方が、かなりお得になるでしょう。

滑走中のNext Blackout 110

写真6滑走中のNext Blackout 110

総評

「Next Pro Black 110」には、本来なら自分で買い集めないと揃わないようなグレードの高いのパーツが最初から装着されています。そのため、購入した時のセッティングで、とても快適にフリースケートや長距離滑走を楽しむことができるブーツです。

110mm以上の大径ウィールを装着して滑る場合、80mm以下のウィールで滑るより、ブーツに強い負荷が掛かります。そのため、ブーツの剛性やサポート力が弱いと、ブーツが負けて滑りづらくなる場合があります。
この「Next Pro Black 110」は剛性もサポート力も十分あり、しかもフレックスや足の可動域とのバランスも良いので、大径ウィールでも滑りづらくなることはありません。
ただ、インナーブーツのパッドが硬めなので、1日中履き続けてまったり滑るような使い方には、あまり向いていないかもしれません。モニュメントや障害物を利用しながら街中を自在に滑り回るフリースケートのような、瞬発力が必要な滑りに性能を発揮してくれるはずです。
また、3x90や4x80などのフレームに交換すれば、トリックスラロームにも十分に対応可能です。

とにかくハードブーツとは思えないくらいレスポンスが良いので機動性が高く、安定感があって取り回しやすく、ハイスピードで気持ち良く滑ることができます。
少し高い価格も、スペックを見れば、実はかなり割安なことが分かると思います。
唯一弱点と言えば、インナーブーツを熱成形をしないとなかなか足に馴染まず、ひどいフィット感が続く可能性があることです。
しかし、その弱点も熱成形すれば一転して、最高のフィット感とレスポンスを得られるようになります。

インナーブーツの熱成形が必須条件となりますが、その手間さえ惜しまなければ、「Next Pro Black 110」は自分史上最高の3x110ハードブーツになることと思います。

参考サイト

公式サイト:Powerslide Next Pro Black 110
販売サイト:POWERSLIDE 2020 NEXT PRO BLACK 110 - DEEPORT ONLINE SHOP