ハードブーツ5種評価会:ランキング

インラインスケートのブーツは数多くのモデルが販売されています。その中で、プラスチックのシェルにインナーブーツが入っているタイプの「ハードブーツ」と呼ばれているブーツがあります。
このハードブーツは比較的価格が低めですが、サポート力があって操作性も悪くなく、耐久性も高い、という特性があります。そのため、初心者から上級者まで、幅広いインラインスケーターが履いて滑っています。
そこで、日本国内で人気があって入手しやすく、ウィール径が80mmのハードブーツ5種類(RB Cruiser、Twister Edge、Imperial One 80、Next 80、FR1 80)の滑り比べを2020年2月18日に行い、その評価をSkrapの記事としてまとめました。

ブーツを評価するのは、インラインスケート歴が長く、得意なジャンルや経歴が異なるインラインスケーター4人(筆者含む)です。
この4人がそれぞれ特徴があるブーツを実際に履いて自由に滑り、その上でブーツを評価し、さらに各自の主観で順位付けをしてもらいました。
ただし、Twister Edge、Next 80、FR1 80は旧モデルのため、改良された現行モデルとは履き心地や操作性が異なる可能性があります。
この点を踏まえ、それぞれの評価を参考に、ブーツ選びをしていただければと思います。

ちなみに、この評価会で用意したブーツは、Twister Edgeのパーツの一部を無償で借りた以外は、全てSkrapのスタッフが自腹で購入したものです。
評価者4人は現在、どこからのサポートを受けていません。
そのため、メーカーやショップに忖度することなく、思ったことや感じたこと、良いことも悪いこともそのまま記載しています。
また、各評価者にはブーツの評価を詳しく書いてもらいましたので、当ページ最下項目の「他の評価ページ」のリンクをたどって読んでみてください。

協力:東京ドーム ローラースケートアリーナ

評価する人

篠田 淳

篠田 淳
インライン歴:29年(1991年2月〜)
得意ジャンル:ベーシックスケーティング、フリーライド
長きにわたるメーカー所属インストラクター及びテストライダー経験から、インラインスケートを工業製品の視点で見るモノマニア系スケーター。
コストパフォーマンスに優れたスケートを好む傾向にある。
WITCHベアリングの開発者。

安井 夏

安井 夏
インライン歴:27年(1992年5月〜)
得意ジャンル:アグレッシブ、フリーライド
スラローム、アグレッシブ、フリースケートなどに分化する前から滑っているので、基本オールラウンドスケーターという名の器用貧乏。
ただ根性無しなので、ストイックなスピードだけはほとんど触れずに26年経ちました。(笑)
最近は、グラインドに重きを置かないフリーライド寄りのアグレッシブスタイルや、街でのパワーブレーディングがメイン。

中野 悠希

中野 悠希
インライン歴:11年
得意ジャンル:トリックスラローム、アグレッシブ、エアー、スケーティング
数々の大会で優勝、ベスト8を必ずしてきた中で1番嬉しいのは、誰もできないトリックを皆さんにご覧いただくことです!
様々なところでデモンストレーションをしたり、「next ride crew」で撮影しムービーを上げているので参考にしていただき、スケートを楽しんで欲しいですね!

高田 健一

高田 健一
インライン歴:26年(1993年7月〜)
得意ジャンル:スラローム
スラローム、アグレッシブ、フリースケート、インラインホッケー、スピードスケートなどのいろいろなジャンルを楽しんできました。
中でもスラローム(トリスラ、FSSの両方)は最も時間を割いて練習し、国内外の大会に出場経験あり。
最近は大径3輪のブーツで、朝晩の街中をクルージングすることが多い。
当サイト「Skrap」の編集兼ライター。

評価するブーツ

RB Cruiser / Rollerblade (2019-2020モデル)

RB Cruiser / Rollerblade (2019-2020モデル)
2015年に登場した「RB80」の系統を引き継ぐ、Rollerbladeの初心者向けハードブーツ。
価格が安いこと以外、目を引く特徴はない。
価格相応のパーツとなっているが、金属製フレームマウントなど、現在のハードブーツの基本は押さえた仕様となっている。
今回用意した中で最安値のブーツ。

商品

項目 概要 備考
商品名 RB Cruiser -
メーカー Rollerblade -
型番 07957000477 -
参考価格 20,000円(税別) -
総重量 1,459g 26.0cm片足

構成

パーツ ギア
ブーツ RB
フレーム Ext Alu 243mm
ウィール Urban 80mm/85A
ベアリング SG7
同梱 ヒールブレーキ

Twister Edge / Rollerblade (2018-2019モデル)

Twister Edge / Rollerblade (2018-2019モデル)
2002年にTecnicaから発売されたTwisterの流れを汲むブーツで、Rollerbledeに移ってから3回目のフルモデルチェンジを経た最新のTwisterシリーズの一足。
直線的なデザインが特徴的な中級者向けのフリースケート用ブーツ。
サポート力が高いので、国内ではスラロームに使用している初心者も多い。
※ 「Twister Edge」は2020モデルより、シェルとインナーブーツが改良され、履き心地などが改善されています。その点を踏まえて評価をお読みください。

商品

項目 概要 備考
商品名 Twister Edge -
メーカー Rollerblade -
型番 07847500800 -
参考価格 30,000円(税別) -
総重量 1,695g 25.0cm片足

構成

パーツ ギア
ブーツ Twister Edge
フレーム Ext Alu 243mm
ウィール Urban 80mm/85A
ベアリング SG7
同梱 ヒールブレーキ

Next 80 / Powerslide (2018-2019モデル)

Next 80 / Powerslide (2018-2019モデル)
低重心が特徴となるTrinityマウント搭載のハードブーツ「Nextシリーズ」の4x80モデル。
アーバン系のフリースケート用ブーツ。
インナーブーツは熱成形対応。
全パーツがドライバー類で交換可能。
※ 「Next 80」は2020モデルより、インナーブーツが改良され、履き心地などが改善されています。その点を踏まえて評価をお読みください。

商品

項目 概要 備考
商品名 Next 80 -
メーカー Powerslide -
型番 908224 -
参考価格 28,000円(税別) -
総重量 1,650g EU42-43片足

構成

パーツ ギア
ブーツ Next
フレーム Elite Casted 4x80/243mm
ウィール Spinner 80mm/85A
ベアリング Wicked ABEC 9

Imperial One 80 / Powerslide (2019-2020モデル)

Imperial One 80 / Powerslide (2019-2020モデル)
Powerslideの定番ハードブーツ。
インナーブーツは熱成形対応。
フレーム位置が縦横に無段階調整ができる「Xスロット」を採用。
2013年の発売以来、数多くのバリエーションがリリースされて続けているが、Nextの登場により昨今は販売されるモデル数が減ってきている。
※ 2019年に発売されたImperialの4x80モデルには価格の異なる2機種があり、今回使用したのは価格の高い「Imperial One Jade 80」となります。

商品

項目 概要 備考
商品名 Imperial One 80 -
メーカー Powerslide -
型番 908347 -
参考価格 32,000円(税別) -
総重量 1,479g EU41-42片足片足

構成

パーツ ギア
ブーツ Imperial
フレーム Elite Casted MG 3x125/255mm
ウィール Undercover 125mm/86A
ベアリング Wicked ABEC 9

FR1 80 / Sebaskates (2016-2017モデル)

FR1 80 / Sebaskates (2016-2017モデル)
Free Rideから取られた「FR」の名が示すように、街中を自由自在に滑り回るために開発された、Sebaskatesのハードブーツ。
ハードブーツに金属製のフレームマウントが採用された先駆けのモデル。発売当時は他のハードブーツより操作性が良かったため、国内ではスラローム用ブーツとして人気があった。
2006年に発売されて以来改良を重ね、カラーバリエーションやフレームバリエーションが豊富。
今回用意したブーツの中で最も価格が高い。
※ 「FR1 80」は2018年にグループ会社の「FR skates」からの販売となり、現行モデルはパーツがいろいろ改良されています。その点を踏まえて評価をお読みください。

商品

項目 概要 備考
商品名 FR1 80 -
メーカー Sebaskates -
型番 SSK-FR180-WH -
参考価格 39,000円(税別) -
総重量 - EU40片足

構成

パーツ ギア
ブーツ FR
フレーム 4D Flat 243mm
ウィール Street Invader 80mm/84A
ベアリング Twincam MW9 Titanium

ランキング発表

各評価者ごとのベスト3となります。

1 2 3
篠田 RB Cruiser Next 80 Imperial One 80
安井 Next 80 RB Cruiser Twister Edge
中野 FR1 Next 80 Imperial One 80
高田 Next 80 RB Cruiser Twister Edge

各ブーツの詳しい評価内容は下記のリンクからご覧ください。

篠田のベスト3

1位 RB Cruiser

Skateとしての機能的評価は決して高くないが、今回最も驚きを与えた1足。
こんなにバランス*の取れたスケートは久しぶりだな、と思った。
もう一度言う。全国のレンタルスケートが、これになればいいのに!!(笑)
* 安定感、操作性がマイルド、疲れにくさ、素材、価格のバランス

2位 Next 80

相変わらずプッシュしやすいなあ、と思う。
前後の高低差なのか、マウントの仕様なのか、まだわからないが、この操作性の良さは本当に気持ち良かった。
欲を言えば、インナーとカフの高さのギャップがもったいないので、ハイカフにしたい!

3位 Imperial One 80

これは意外に(?)良かった。
誰が乗ってもそこそこ滑れそうな懐の深さを感じた。
改めて、シェルとカフの各々の高さや位置関係って大事なんだな、と思わされた。
RB Cruiserに並び、代表的なスタンダードスケートと言える。

安井のベスト3

1位 Next 80

箱出しではブーツの魅力が半分も伝わらない、残念な子。(笑)
が、あら不思議。
インナーを焼く、インソールをちゃんとしたものに交換する(インソールは値段ではなく自分の足形に合っているかが重要です)などの手を加えれば、一気に快適性がアップ!
さらにはPS社のトリニティファミリーは多彩なフレームがラインナップされているので、後からも色々楽しめるお得なブーツ。
という訳で自分的ランキング1位です。

2位 RB Cruiser

え、コレが約2万円で手に入るの⁉︎
廉価ブーツですが、ブーツシェル、フレーム、ウィール、全部ノーマルのままで使えます。
流石にインナーは廉価版でフィット感が無いため、自分が使うとしたらMYFIT LinerのRecall Dual FitかCrown Dual Fitを入れて使います。
コスパ的に考えて2位です。

3位 Twister Edge

うーん、まあまあ良いんです。世の中で売れているのも何となく分かります。
ただ、重量級のブーツなのにフィット感がイマイチというか、RBお得意のサラサラ系ライナーはブーツの中で足が動いて追従性が悪く感じられてしまうので、個人的にはイマイチ。
ブーツの作り自体はとっても良いんですけどね。
剛性もあり、一足で幅広く色々使えるブーツだと思います。

補足

Imperialを推さない理由は単純に「Imperialよりも価格の安いトリニティブーツが有るのに、古いブーツを推す理由が無かったから」です。(笑)
※ Imperial自体は履く人の足を選びますが良いブーツで、自分でも所有して使っています。

中野のベスト3

1位 FR1

前傾になるため、膝を曲げやすい。
様々なパーツがあり、多くの種目に挑戦できる。さらに、そこでハイパフォーマンスが可能。

2位 Next 80

どの方でも安定して滑れるようなブーツ。
インナーブーツを熱成形して足を慣れさせると、長時間でのライドでも疲れにくい。

3位 Imperial One 80

とにかく軽い。
細かい動きを小さな力で発揮できる。
中学生や女性などに良い。

高田のベスト3

1位 Next 80

カフが少し柔らかいためか、カフ周りのフィット感とサポート力がイマイチ良くないけれど、Trinityマウントによる安定感と操作性の良さはピカイチ!
初心者、街乗り、トリックスラロームなどに向いていて、汎用性が高いのも魅力。

2位 RB Cruiser

コスパが良すぎる!
これで2万円くらいで購入できるのは、さすがRollerblade。逆に言うと、この品質でこの価格のブーツを作るのは、Rollerbladeしかできない。
各パーツの品質や耐久性はあまり高くはないと思うが、初めて買うブーツとしては、これ以上のブーツはないだろう。

3位 Twister Edge

ブーツ自体も履き心地も硬くて好みではないけれど、操作性が良いのは評価できる。
他社のブーツを含め、同価格帯のブーツの中でも安っぽさがなく、メーカーがしっかり開発しているのが分かる。
硬いブーツ、サポート力が高いブーツが好みの人には向いている。

総評

安井評

今回コンセプトが違う複数メーカーのスケートを履き比べましたが、自分がスケートを初めた約30年前とは比べ物にならない位スケートが進化していて、どのスケートも一定のラインはクリアしていました。
特に近年トリニティシステムを前面に押し出してきているPS社の躍進が目覚ましいですが、RB社なども負けず劣らず高性能なスケートを販売していると思います。

特に感じたのが全体的にコストと性能のバランスが取れてきていて、10年前ならもう少し価格が上がっていても不思議でないグレードが比較的低価格で提供されているので、これからスケートを買う人、買い換える人にはお得な時代だと思います(物価や消費税の上昇率を考えたら、むしろ値下がりと思えるくらい)。

中級グレードのスケートを購入した場合、後からパーツ交換で上級グレードと同じにできる物が多いですが、初期投資+追加投資>上級グレードなので、本格的にスケートをしている方(二足目以降の買い替えを検討している方)は、最初から上級グレードを購入したほうが幸せになれると思います。
ただし、グレード以前に自分の足に合うことが重要なので、できれば試し履き(近くにショップが無ければ仲間に履かせて貰うとかね)はマストだと思います。

高田評

このランキングを決めるに当たって、1位と2位はすぐに決定。
ところが3位は、履き心地に優る「Imperial One 80」と、ハードブーツらしからぬ素晴らしい滑り心地の「Twister Egde」と、どちらにするかかなり迷いました。しかしブーツを選ぶ際に「滑る」という機能が最も重要だと思い、「Twister Edgeを3位に。

今回用意されたブーツの中で、最も期待していたブーツ(FR1 80)と、最も期待していなかったブーツ(RB Cruiser)の評価が、どちらも滑る前の予想を逆転したのがとても興味深かったです。
ただ、最新の「FR1 80」は、評価会で使用したモデルよりパーツが改良されているので、この評価会で指摘された点が改善されている可能性はあります。とは言え、過去のモデルを購入する際は、注意が必要でしょう。
一方、「RB Cruiser」の良さは、完全に予想外でした! もちろん、改良して欲しい点は多々ありますが、このレベルのブーツが約2万円で買えるというのは、本当に驚きです。初心者で、なるべく金額を押さえたいのなら「RB Cruiser」の一択でしょう。
何はともあれ、ブランド名や友人が使用しているからという理由でブーツを選ぶことはせず、やはり実際に足を通してから購入する重要性を改めて思い知らされる体験でした。

今回5足を履き比べて最終的に思ったのが、初心者も上級者も、4x80のハードブーツが欲しくなったら「Next 80」だな、と。
滑りも良いし、ステップアップする純正パーツも多いし、後からいろいろ楽しめます。
どのハードブーツを買ったら良いか分からない人は、Nextを買っておけば間違いないでしょう!

その他

各評価者には詳しくブーツの評価を書いてもらっていますので、購入を考えている方、詳細が気になる方は下の「他の評価ページ」のリンクをたどって読んでみてください。

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