90mmや84mmウィールが使える新規格のスラローム用フレーム「FR Freestyle Frame」のレビュー:高田健一

2020年、FR Skatesがフリースタイルスラローム(FSS)用として発売した「FR Freestyle Frames」。
既存の4x76や4x80などの4輪フレームと同じような感覚で滑れるのに、大きめのウィールを使うことによって高難易度の技がやりやすくなるフレームです。
この新しい規格のフレームをSkrapの高田が実際に試してみました。

スペック

項目 概要
メーカー FR skates
商品名 FR Freestyle frames
種類 90/72(237mm、90-72-72-90mm)、84/72(231mm、84-72-72-84mm)
重量 249g(90/72、シャフト込み)
参考価格 18,000円

「90/72」と「84/72」の2種類があります。
両モデルとも真ん中の2輪に72mmのウィールを入れ、「90/72」は1輪目と4輪目に90mm、「84/72」は84mmのウィールを入れる仕様になっています。
4輪全て90mmや84mmウィールを入れると、フレーム長が伸びてしまい、繊細な動きがしにくくなります。
そこで、中央の2輪を小さめの72mmサイズにして、フレーム長と車高を4x76や4x72フレームくらいに押さえつつ、大きいウィールの有利さを利用できるようにしています。
中央2輪のシャフトを上下反転させることによって、フルフラットと2mmロッカリングの変更が可能になっています。

FR Freestyle frames 90/72 上段:フレームを横から 中段:フレームを上から 下段:フレームを下から

写真1FR Freestyle frames 90/72 上段:フレームを横から 中段:フレームを上から 下段:フレームを下から

レビュー(90/72モデル)

良い点

1輪目や4輪目に乗ると、90mmウィールのスピードをしっかり使えます。
76mmや80mmのウィールより、車や自転車のギアを1段上げたようなスピードアップ感です。

ワンウィール系やスピンの技をする時は、ウィールの直径の大きさが有利に働きます。
例えば、スワンなどの1輪目や4輪目を使用して回るスピン技で、4x76フレームだとギリギリ回れた場合でも、この90/72だと余裕を持って回れます。
90mmウィールは、76mmウィールより円周が約1.2倍です。つまり、ウィール1回転すると90mmは76mmより20%も長く進めるのです。
FSSをする上で、このメリットはかなり大きいと思います。

スピードスラロームでも有効なフレームだと思います。
スピードスラロームもパイロン間を滑っている時は、ほぼ4輪目に乗っているはずですので、90mmウィールのスピードを利用でき、タイム短縮が期待できます。

悪い点

ウィールのサイズが大きいと、小さいサイズより、カーブの軌道が少し膨らむなど、動きが少し大きくなります。
少し使用して大きめのウィールの感覚をつかめれば問題ないと思いますが、慣れる時間が多少必要になる場合があるかと思います。

サイズの大きな外側のウィールから、真ん中の72mmウィールに荷重を変えると、車のギアをシフトダウンした時に起こる軽い変速ショックのような減速する感覚があります。一気にスピードが落ちるわけではありませんが、少し減速したことを体感できるレベルです。
フルフラットのフレームでロッカリングする場合は、72mmと76mm、76mmと80mmなどの4mm差のウィールを使用しますが、4mm大きいウィールから小さいウィールに荷重を変えても減速する感覚はないと思います。しかし90mmから72mmへ乗り換えると、減速したことがわかると思います。よく捉えると、それだけ90mmウィールはスピードが出ているということになります。
そのため、1輪目や4輪目に乗り続けてスラロームをし続けられるのであれば、速度感が変わらないので問題ありません。しかし、荷重ウィールをあまり気にせずにスラロームをする、あるいは真ん中のウィールにも乗ってしまうことが多いのであれば、スラローム中に無駄に減速させてしまう可能性があります。そういった人はこのフレームには不向きかと思います。

トリックスラロームをする場合はピンポイントで1つのウィールの荷重せずにベタ乗りして、結果的に中央の2輪にも乗っていることが多いと思います。
そうすると、このフレームの特性を活かし切れないと思いますので、トリックスラロームをする人にはあまりオススメできません。

国内で90mmや84mmのウィールを用意するのが難しいかと思います。
このFR Freestyle Framesを販売している店舗でも、90mmや84mmサイズの取り扱いがない、あるいは売り切れていたりします。
これでは、せっかく使ってみようと思っても、購入をためらう大きな要因になるかと思います。
Powerslide系であれば、国内のショップで90mm、84mm、72mmの全サイズを同じ種類で揃えることが可能ですが、取り扱い店が少ないことも事実です。

Powerslideの3x90フレームとの比較

  • 車高(路面から足裏までの高さ)は、どちらも165マウントの4x80フレームと同程度で、ほぼ同じ感覚。
  • ウィールとウィールの間が狭いため、小回りは90/72フレームの方が上。
  • 真ん中に乗った時は、全輪90mmの3x90フレームの方はスピードが落ちない。

4輪フレームのロッカリングが好きで、1・4輪に乗り続けたりスピンを多用して2・3輪が補助輪扱いの滑り方なら、90/72が合っています。
しかし、トリックスラロームをするなど真ん中にも乗って滑ることがあるのなら、3x90フレームの方が減速の違和感がなく、安定感もあって滑りやすいと思います。

総評

FSSをするのであれば、このFR Freestyle Framesはかなりオススメできます。
Powerslideの3x90フレームは車高が低くてフレーム長が短いため取り回しやすいと思いますが、4輪フレームから離れたくないのであれば、この大径ウィールの利点を取り込んだ画期的なスラローム用4輪フレームは、強い味方になってくれるはずです。
もし自分がFSSに真剣に取り組んでいて、SebaskatesやFR Skatesのブーツを履いているのなら、間違いなくFR Freestyle Framesを使っていると思います。
ポーランドの元WSSA女王であるKlaudia Hartmanisさんも、84/72フレームの良さをYouTube動画「FR Skates FR Freestyle Frames review」で語っています。
しかし世界的にもまだあまり普及していないようで、開発したSebastien Laffargueさん本人も現況に嘆いているようです。

国内ではトップレベルのスケーターが使用していないことと、90mmや84mmサイズのウィールの入手の難しさが普及を妨げていると思われます。
FR Skatesからサポートを受けている柴垣匡義さんは、カーボンフレームの硬さの方がメリットが大きいと考えて使用していないようですが、Facebookの記事で良い感触の使用感を述べています。
また、90mmや84mmのウィールに関しては、FR Skates製は入手できなくても、Powerslideの「Spinner」やUndercoverの「Team」や「Raw」であれば比較的入手しやすいです。Shop SkrapDeeportなどのPowerslideやUndercover商品取扱店にオーダーすれば購入可能です。

国内での販売開始から半年以上経つのに、まだまだ使用している人が少ないフレームですが、FSS技がしやすくなるのは確かです。
FSSの競技会に出場している人はもちろん、ワンウィール系の技を練習している人は、ぜひともFR Freestyle Framesを試してみて欲しいと思います。

参考

現在の国内での販売サイトは以下の通りです。

Shop Skrapでは、この記事を書くために購入したFR FR Freestyle Framess 90/72フレームとSpinnerウィールとABEC9ベアリングのセットを販売中です。
試用した時間は短く、屋内リンクでテストしたのでほぼ新品の状態ですが、中古品ということで全てを定価で揃えるより安くなっています。

販売中の本記事の執筆のために試用したFR Freestyle frames 90/72

写真2販売中の本記事の執筆のために試用したFR Freestyle frames 90/72